デリケートゾーンの薬

膀胱炎に効く市販薬は病院受診の代わりになるのか?

 

現在市販薬には膀胱炎に効く薬がいくつか発売されています。例えばボーコレンや腎仙散やウワウルシなどの薬が有名ですね。

 

そうなると膀胱炎で病院を受診することに抵抗がある人にとっては非常に助かる話しですが、問題は市販薬で膀胱炎が治るのか?と言う疑問・不安になると思います。

 

そこで今回は膀胱炎に対しての市販薬はどうなのか?本当に市販薬で膀胱炎が治るのか?などの疑問について紹介していきたいと思います。

 

膀胱炎に頻繁になる人、ひょっとしてこれは膀胱炎かも?と思う人、市販薬の膀胱炎の薬の購入を考えている人はぜひ参考にしてみてください。

引用:感染症治療ガイドライン2015 ―尿路感染症・男性性器感染症―

市販の膀胱炎治療薬について

膀胱炎の治療は抗生剤

膀胱炎と診断された時に治療の基本となるのは抗生剤です。他の薬で治療をスタートする事はまずありません。

もし膀胱炎になった経験がある人ならばクラビットなどの抗生剤の飲み薬を処方された事がある人も多いのではないでしょうか。

 

しかしながら現在膀胱炎に効く抗生剤は市販化されていません

つまり理論上は市販薬では膀胱炎は治せないということになります。

 

ではどうしてドラッグストアやネットには膀胱炎に効く薬として発売されている市販薬があるのでしょうか。

 

市販の膀胱炎治療薬の役割

実は膀胱炎に効く市販薬は「抗生剤を飲んでも膀胱炎の症状が残る場合に症状を緩和させる目的」として使うのが本当は正しい使い方になるんです。

 

例えば膀胱炎の症状としては「頻尿」「排尿痛」「残尿感」「不快感」などの自覚症状を訴えるものが多いですが、病院でもらった抗生剤を服用した後でもなおこれらの症状が継続するときに服用するべきなんです。

薬のパッケージを見るとあたかも「これだけ飲めば膀胱炎はOK」の様に見えますが、これは大きな誤りになります。

 

市販の膀胱炎治療薬を個別に評価

では実際に膀胱炎治療薬として発売されている市販薬を1つずつ見ていきたいと思います。

ボーコレンは膀胱炎に効くとは言っていない

まずネーミングからいかにも膀胱炎に効きそうな市販薬のボーコレンですが、実はボーコレンは膀胱炎に効くとは言っていません。効能効果を見てみると

頻尿、排尿痛、残尿感、尿のにごり ボーコレンHPより

となっており膀胱炎の時の症状に効果があるとしながらも実際は「膀胱炎に効く」とは明記されていないんです。

 

そもそもボーコレンは漢方の五淋散と言う漢方です。

五淋散とは炎症を抑えたり尿の排泄を促したりすることにより、排尿時のトラブルに対して効果を発揮する漢方になります。

ちなみにドラッグストアの膀胱炎のコーナーに五淋散の漢方が並んである事があるかもしれませんが、実はボーコレンと同じ成分になります。

 

ただ市販の五淋散(ボーコレンを含む)は配合されている生薬の量が医療用の半分しかなく、また値段もそこそこ高いためあまりおすすめはしません。

ちなみにジェントスルーコーワ細粒は「八味地黄丸加五味子麦門冬」と言う漢方と同じ成分からなり、こちらも尿トラブルを改善する漢方となっています。

 

腎仙散のウワウルシの殺菌作用に注意

膀胱炎への効能効果が書かれていないボーコレン(五淋散)とは違って腎仙散と言う複数の生薬からなる腎仙散は

腎炎、ネフローゼ、腎盂炎、膀胱炎、ムクミ、尿利減少 腎仙散HP

と明記されています。

 

ではどうして腎仙散だけが膀胱炎への効能効果を謳うことができるのかと言えば詳しくは分かりませんがおそらく独特の生薬の配合、そしてウワウルシと言う殺菌作用のある成分を配合している事が関係あるのではないでしょうか。

ウワウルシとは殺菌作用・利尿作用を兼ね備えた生薬となり効能効果は残尿感,排尿に際し不快感のあるものとされています。

となると冒頭で膀胱炎は抗生剤が必要だといいましたが、代わりのこのウワウルシでも膀胱炎の治療ができるのではないか?と考えたくなりますよね。

 

ただこれに関しては以下の様な論文があります。

軽い尿路感染症を有すると疑われる18〜70歳の女性382人を対象としウワウルシを投与した結果、2~4日目の調査ではフラセボと比べて差がなかった。またウワウルシを投与する事で抗生剤の使用量を減らすわけでもなかった。PMID: 30685500

 

これはウワウルシは抗生剤の代わりにはなり得ず、また抗生剤の量を減らしてくれる手助けにもならない可能性があると言うことになります。

つまり結論から言えばやはり腎仙散も膀胱炎の治療とは考えにくいという事になります。

ちなみにこの研究ではイブなどに配合されているイブプロフェンを膀胱炎に使った場合の研究もおこなわれており、イブプロフェンだと膀胱炎治療の抗生剤の量を減らすことができるといった結果になっています。

 

どうして市販の膀胱炎治療薬が効くのか

市販の膀胱炎治療薬はあくまでも抗生剤の治療があって、その後も膀胱炎の症状が続く時の補助的な役割として用いるべきと言う立ち位置だと考えます。

しかし中には市販の膀胱炎治療薬で膀胱炎が治ったという人もいることでしょう。

これはなぜか?

 

これはおそらく自然治癒した、もしくは一般的な膀胱炎ではなかったという可能性があります。

 

まず初期の膀胱炎ならば抗生剤なしでも改善が見られることは決して珍しい事ではありません。その時に市販の膀胱炎治療薬を服用することで、尿を出す働きがあったり炎症を抑える働きによって膀胱炎の自然治癒を促進したというケースもあるでしょう。

抗生剤も何も投与しない膀胱炎に漢方がどれ程効果があるのかに関しては根拠となるものがないため何とも言えませんが、膀胱炎の症状(排尿時のトラブルなど)に対して効果のある漢方ならば何もしないよりは効果を感じられる場合もあるかもしれません。

 

また膀胱炎には間質性膀胱炎と言った細菌感染が原因ではない膀胱炎があります。この場合は細菌の感染による膀胱炎ではありませんので抗生剤が効きません。また初期では症状が出ないこともある位なので一時的に症状が落ち着いている可能性もあります。

それに膀胱炎だと思っていた症状が実は違っていただけと言うケースもゼロではありません。

 

ただ繰り返しになりますが市販の膀胱炎治療薬はあくまでも補助的な役目であり、治療の代わりとはなり得ません

膀胱炎を繰り返したり、膀胱炎の様な症状が続く場合には仮に市販薬を飲んでも改善が見られない場合には言わずもがなですが病院を受診するようにしてください。

また高熱・背中や腰の痛みがある時は膀胱炎ではなく他の疾患の可能性、例えば腎盂腎炎等の可能性もありますので必ず病院に行くようにしましょう。

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