妊婦の薬

妊婦の鎮痛薬はイブは安全、ロキソニンは危険って誰が言ったの??

 

最近は大分マシになりましたが、少し前まではネット上には妊婦が飲める痛み止めを検索すると「イブがOK、ロキソニンはNG」というのが良く見られました。

しかしその根拠は乏しくまた妊娠の時期(初期か後期か)によっても変わってきます。

 

間違えた情報をネットで身に付けて妊婦の方が誤った使い方をしてしまった場合にはどうしようもありませんので、今回は妊婦の痛み止めについて紹介していきたいと思います。

 

妊婦はイブはOKでロキソニンはNGは本当か?

はじめにきちんと言わせてもらいますと市販の痛み止めで妊婦が絶対に安全に使える薬はありません。

実際にはほとんどの痛み止めで

「この期間は絶対飲まないようにしてください。そしてそれ以外の期間は服用して起きうるリスクと服用しないで起きるリスクを考慮して決めてください」

という様に注意喚起されています。ロキソニンもイブプロフェンもそうなっています。

 

そして妊婦が使える薬の指標としてよく利用されるオーストラリア基準ではロキソニンもイブもCに分類されています。これは7段階ある中で5段階目に安全と言う事になり

「医薬品としての作用によって、胎児や新生児に可逆的な傷害を与えるか、与える可能性がある薬物。奇形を発生させることは無い」

となっています。つまりとても安全とは言えません。

 

またアメリカのFDAによる胎児に対する薬の危険度を示す評価基準でもイブはC~Dとなっており5段階評価の3~4番目の安全性で、こちらも安全とは言えません。(ロキソニンはFDA分類なし)

場合によってはこれらの痛み止めを使用するケースもありますが、この場合は病院の医師の判断の下で使用する時だけであり、決して市販薬を自己判断で使用してはいけません。またいずれも添付文書上では妊娠後期・後期には使用できずに禁忌とされています。

参考:ブルフェン添付文書 参考:ロキソニン添付文書

 

つまりイブはOKでロキソニンはNGなんてことは全くありません。基本どちらもNGです。

場合によっては医師の監視下においてこれらの処方がされる可能性もありますが、市販薬としては基本的にNGとかんがえてください。

 

一方でアセトアミノフェンを配合した解熱鎮痛剤は比較的安全なのでオーストラリア基準でも最も安全な「A」に分類されています。ただ市販薬の中には純粋なアセトアミノフェンだけではなく、その他にも成分が配合されている薬もありますので必ず単体のアセトアミノフェンである事を確認し(タイレノールA等が該当します)、使う場合にも短期使用に留めてもしそれでも痛みが我慢できない時は受診を優先するようにしてください。

 

基本妊婦は市販薬を使わない方がいい

説明書の「使用前に妊婦は相談すること」に注意

大半の市販薬には「使用前に妊婦は相談すること」と記載されています。

ただこうサラッと書かれていると「何だか使ってもそこまで悪くなさそうだな」と言う印象を持つ人もいるかもしれません。なぜなら市販薬には「使用しないこと」の対象の場合もあるからです。

「絶対に使ってはいけない人」がいる一方で「相談が求められている人」がいるとなると、後者の方が「何だか比較的安全かも」と思ってしまう人がいるかもしれません。

しかし上でも紹介したイブやロキソニン同様に妊婦が完全に安全に使用できる薬は非常に限られています。

また問題なのが明確に妊婦は禁止としている薬が想像以上に少ないという事です。

 

ですから「使用してはいけない」に該当していないからと言って決して安全とは考えてはいけません。むしろ大半の薬はNGになりますので、もし症状が軽くても基本的に市販薬を使用するのは避けましょう。

 

注意されていない妊婦の市販薬もある

また市販薬の中には「妊婦は相談すること」と言う但し書きすらない薬であっても使うべきでない薬もあります

 

例えばヨード配合のうがい薬は妊婦に使用不可とはされていませんが、毎日ヨードを連用して使用する事はヨードの過剰摂取に繋がり胎児に影響を与える可能性もあるので注意が必要だったりします。参考:全日本民医連

「うがい薬くらい問題ないだろう」と思う人も多いかもしれませんが、妊娠時期には「医薬品」と書かれてあるものには十分注意するようにしましょう。

 

妊婦でも漢方は大丈夫は間違い

「漢方は非常に安全で副作用もないから妊婦が使っても安全」と言うのも誤りになります。

例えば風邪によく使われる葛根湯には「マオウ」と言う生薬が配合されており胎盤への血流を阻害する可能性があったり、便秘に使用される大黄甘草湯には子宮収縮作用があるため、漢方だから妊婦にも安全に使えるというのは間違いになります。

もちろん場合によっては短期間だけ使用するケースもありますが、こちらもやはり医師の処方の下で使用するようにしましょう。

 

妊婦は薬を使用する時には相談すべき

基本的に妊娠中の薬は鎮痛薬に限らず、病院を受診して医師に処方箋を書いてもらう事を勧めます。

自己判断で誤った選択をすることで取返しのつかない事になるよりも何倍も良いはずです。

 

もし病院に行く時間がどうしても取れない場合は薬剤師や登録販売者に相談してみるようにしてください。ネットでも市販薬が購入できる時代であるため、市販薬を使うことが自己判断になりがちですが、妊婦の方の場合は絶対に自己判断で使用するのはやめましょう。

※薬の接客で悩んでいる人は絶対に読んでください

日頃このブログを読んでくださる方に非常に感謝しています。

この度、日頃の感謝も込めて「疾患別の攻略本(参考書)」を作成しました。

「参考書は広く浅く値段も高い」「自分が勉強したい分野の内容が薄い」と感じる人に向けて分野を絞って紹介しています。

現在【解熱鎮痛薬】【風邪薬】【花粉症】【胃薬】の4を公開していますが、間違いなく下手な参考書を何冊も買うよりもはるかに役立つ情報を詰め込んだものになっています。

もちろんいきなり購入する事に抵抗がある方もいると思いますので、もし気になる方は目次だけでも見ていってください。

誰も教えてくれない市販薬の参考書